俳誌「鷹」590号 | 鷹集

俳句雑誌「鷹」2013年10月590号

——— 軽舟主宰選 鷹集より抄出

鈴振つて指のさびしき額の花 東京 蓜島啓介

朝の虹神話の里を跨ぎけり 宮崎 佐藤守

蝦蟇口に父の名刺や夜半の秋 立川 西田玲子

八月やかたく乾きしバスタオル 狛江 清水右子

イヤホンをはずせば現時鳥 埼玉 引間智亮

空蝉や腕につめたき腕時計 東京 兼城雄

ソーダ水めがねに貌の馴染み来し 長野 中嶋夕貴

派出所に廂のあらず立葵 つくば 大西朋

足首にシャネルの五番月涼し 神奈川 甲斐有海

湖の葭の葉ずれや星祭 東京 草彅玲

銀皿に釣銭鳴りぬ夜の秋 鎌倉 加藤よい子

消火栓赤くつつたつ晩夏かな 座間 やうち海

沖を向くサーファーひとりづつ孤独 宮崎 日髙智子

大丸に牛刀買ひぬ日の盛 明石 岩田英二

夕されば髭濃くなりぬ百日紅 兵庫 栗栖住雄

紙縒もて草稿綴ぢぬ柿若葉 東京 伊藤樹彦

夏の月運河は海に尽きにけり 横浜 宮本素子

終電の去りしホームや天の川 三嶋翔雲

象老いて歩みの懈し椎若葉 海老名 瀬戸松子

夕空に富士泛びをるヨットかな 鎌倉 井上魚州

祭来ぬ厨に皿を拭き上げて 大阪 佐竹三佳

真四角にすすむ発掘雲の峰 青森 藤田沙奈恵

丿乀〔へつふつ〕とタクト振りをり夏夕 大田元一

大雪渓刻々雲の影新し 東京 帆刈夕木

立つて飲む水の甘さや法師蝉 東京 矢野修一

人類は絶滅危惧種真葛原 東京 山賀花女

玄関のなくて商家や祭来ぬ 東京 喜納とし子

点線に添うて鋏や夏休 東京 木内百合子

潦先づしほからを映しけり 国立 長沼光子

廃船に槐の花の零れをり 神奈川 宮木登美江

銭湯の富士濡れているラムネかな 神奈川 荒谷棗

湧水の親〔ちか〕しき町や祭笛 川崎 上田鷲也

夏蝶の鱗粉指に恋終る 横浜 土谷啓子

町割つて海に入る川夏燕 横浜 佐藤中也

空濠に一条の水夏つばめ 横浜 吉祥治郎

恋文に技巧はいらず扇風機 藤沢 荒木ひでこ

不死男忌や東都の空の薄濁 千葉 並木秀山

白山の翠薇降りくる植田かな 佐倉 野手花子

烏瓜咲くや雲間の月細し 龍ヶ崎 宮本八奈

貨車が音散らす鉄橋青胡桃 つくば 筒井龍尾

刃物屋の研ぎ音さやに秋隣 水戸 砂金祐年

手品師の鳩は純白夏来たる 水戸 中山秀子

故郷と呼べぬ町なり誘蛾灯 山梨 江渡華子

氷旗揺れ初島を真正面 伊豆の国 山岸文明

盆の僧烏滸言〔をこごと〕に道説きにけり 名古屋 山内基成

庫裡に白湯沸く沛然と半夏生 金沢 島田星花

青眼にして老眼や蠅叩 白山 亀田蒼石

鞄屋の革を鞣せる秋隣 大阪 長岡美帆

指切の指の冷たき我鬼忌かな 豊中 利普苑るな

羨門の冷気したたる蛍かな 宝塚 黄土眠兎

空蝉やカストリ雑誌並べあり 徳島 今岡直孝

一山を離るる雲や更衣 高知 轍郁摩

流れ藻に小蝦まつはり桜桃忌 福岡 三浦啓作

教室の壁の磔像せみしぐれ 福岡 福永青水

舟一つ舫ふ漁港や浜晩夏 福岡 尾形忍

永遠の真昼を告げし雲の峰 宮古島 仲間健


衒叟 / 4sun.jp