自選句ならぬ妻選句

5俳句の読み書きさえ知らない妻の択ぶ、平成廿捌年の卅句。

to 2016/12/31


てのひらに享くるしづけさ緑さす

初夏よ天の余白をみ霽かす

春昼や餡麺麭わりてあはひあり

おほぞらに翅を忘るる蛙かな

ふらここや嘗て女神の空を蹴ゆ

狛犬の舐めたる飴や宵の夏

嘶えける神馬の割きし二つ星

天狼や五十八面体の聲

狐火や客席ひとつだけの劇

煮凝や寝れども覚めぬ白昼夢

踏切の遅るる音や秋日影

びいだまのうつさぬ息や冬暮光

春宵や片鎌槍の螺鈿の柄

夏の夜やイヴはアダムの浮遊肋

王墓なる壺中の天やましら酒

人類の錆びそむるこゑ冬銀河

ごきぶりや新聞紙てふ聖遺物

御破算で願う行方や初景色

割らぬとも個包装たる淑気かな

薫風や枕木を踏む君の影

からつぽの珈琲啜る青嵐

少年の欹つ耳や夏つばめ

ふとももに絆創膏や冬浅し

愛日や噛みしめてゐる涙巻

かげろふや徒歩七分の父の家

絵双六三親等を統べにけり

義父並ぶる花札厚し盆の月

夏近し通帳を繰る匣のおと

組織図に線を書き添ふ無月かな

稟議書の額づく判や室の花