毎日俳壇 | 小川軽舟選 2019年

◆ 毎日俳壇 小川軽舟・選 2019年01月21日

◎ 冬の海大河を呑みて荒れゐたり 市原市 稲澤雷峯
【軽舟先生評】「大河を呑みて」に迫力がある。河口を呑み込む勢いで続々と荒波が押し寄せるのだ。

○ 加湿器と辞書とノートと空腹と 神戸市 松田薫
【軽舟先生評】このように羅列する場合、一つ意外なものがあると効果的。この句は「空腹」がそれ。

風花や言葉重たき父の文 東久留米市 矢作輝
老いてなほ無芸大食落葉掃く 藤沢市 田中修
初髪の寄りて華やぐ駅舎かな 彦根市 松本勝幸
海豹〔あざらし〕の赫〔かがや〕く眼〔まなこ〕冬の海 名古屋市 加藤國基
松蔭に琴電二両冬晴るる 松原市 平畑和子
柊の花や病後の二歩三歩 名古屋市 鈴木幸絵
反骨の血筋脈々冬桜 出水市 清水昌子
寒雷や沖に数多の密漁船 東京 石川昇
ぶつ切りの魚の身と腸〔わた〕雪催〔ゆきもよい〕 青森市 天童光宏
小春日や意外と重きハーモニカ 塩尻市 神戸千寛

◆ 毎日俳壇 小川軽舟・選 2019年01月14日

◎ 鳰(かいつぶり)思はぬ方に月が出て 福岡市 三十田燦
【軽舟先生評】潜った鳰は思わぬ方の水面に飛び出す。その習性がこの句の月の描写の隠し味になっている。

○ 落葉蹴る商談からの帰り道 志木市 谷村康志
【軽舟先生評】商談の結果はどうだったのか。どうもうまくいかなかったように思えるが……。

乗換を急ぐ人波年の暮 堺市 柞山敏樹
底冷えの京に餡かけ饂飩かな 寝屋川市 数藤茂
冬晴や一竿で足る濯ぎ物 奈良市 石田昇己
立冬や飛行機雲の幾筋も あま市 野田朱美
風花に差し伸べし手を嫌はるる 取手市 杉野寵児
空地増え町が変はつて冬が来る 倉敷市 瀬戸初音
師走なる一番星と三日月と 東大阪市 北埜裕巳
木造の山の教会小鳥くる 神戸市 細井朔
熱燗の直ぐに手酌となりにけり 上尾市 中野博夫
一連の凧や日当る雪の山 堺市 おもそ峡人

◆ 毎日俳壇 小川軽舟・選 2019年01月07日

◎ 野良猫の背骨浮き出づ冬の雨 北九州市 岡田成司
【軽舟先生評】
「背骨浮き出づ」が非情な写生だ。その猫を救ってやることのできない無念が雨に滲む。

○ 航跡の消えぬ海峡冬日和 古賀市 大野兼司
【軽舟先生評】
小高い丘から海峡を見下ろす。今日は波も穏やかで、船の曳く長い航跡がまぶしい。

早旦の氏子総出の落葉掃き 前橋市 矢端桃園
ほの甘き切手の糊や漱石忌 東京 吉田かずや
官庁の安き食堂寒卵 東京 関口昭男
眠るものみんな眠らせ山眠る 平塚市 藤森弘上
木枯や休むこと無く観覧車 福岡市 林〓
雲ひとつ風ひとつなき冬の空 高知 渡辺哲也
日射し追ひ移す花鉢十二月 由利本荘市 松山蕗州
初雪や一杯分の豆を挽く 東京 氣多恵子
夕映えの五層の天守鳥渡る 横浜市 竹村清繁
波音のしづもる浦や冬銀河 千葉市 高橋信子